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第165話

「クズ男!」

「何を言っている?」瑛介は不機嫌そうに目を細めて、急に厳しくなっていた。

冷たい声に寺平が完全に我に返った。

彼はただ心の中で罵っただけじゃないか?どうして口に出したのだろう?

寺平は悔しいと思った。

しかし、彼の職場での経験を活かして、すぐに対応を考えた。

「社長、申し訳ありません。社長のことを言っているのではありません。昨夜、母親と一緒にドラマを見ていて、その中の主人公はクズでしたから!」

そう、そうだ。そう説明すればいい。

ドラマ?

瑛介は眉をひそめて、不機嫌そうに彼をじっと見つめていた。「仕事中、そんなことを考えているのかい?」

えっ、何が悪いの?あなただって仕事中に女とふざけているじゃないか?

もちろん、これらの言葉を寺平は言わなかった。

「いえ、社長。突然思いついたのです。あのドラマがあまりにも酷くて、主人公は本当に気持ち悪いです。二人の女性と関係があります。社長はどのように思いますか?クズ男でしょう?」

「そんな無駄なことを聞く暇はない。この買収案を処理しろ」

瑛介は彼に一つのファイルを投げ渡して、寺平が口にしていたその男が自分とは何の関係があるか気づいていなかった。

寺平はまだ心の中で瑛介をクズ男だと罵倒しているが、仕事をしなければならないから、ファイルを持ち上げて、「はい、わかりました」と不機嫌に言った。

その口調が.......

瑛介は思わず彼を見た。見ていなければ良かったが、寺平が憎々しそうに彼をじっと見ているのに気づいた。

寺平は自分をこんな目で見たことがあるか?

瑛介は目を細めて、「寺平、ドラマのクズ男への恨みを私に向けているのかい?」

寺平はそれを聞いて、「そうですよ。あのクズは社長にとても似ていて、今社長を見ると、すぐにあのクズを思い出すようになりました」

瑛介:「.......」

ドラマを見るだけで自分に連想するなんて、何て言うべきだろう?本当に良い部下だろうか?

「社長、これは私のせいにならないですよ。あの俳優のせいです。なぜなら、彼が社長にそっくりで、しかもクズのようなことをしていたのです。二人の女性と関わっているなんて、実に憎らしいです」

瑛介は前も深く考えていないが、寺平の口調と態度を組み合わせて考えてみると、次第に理解し始めた。

彼は目を細めて、冷たく寺平を見
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